付加価値を高めるビジネスモデル8つのパターン

 

差別化のためには付加価値を高めようと言われます。特に中小企業の場合、価格競争に勝つための体力がないという理由で付加価値を推奨しているコンサルタントも多いようです。

 

しかし、お客さんにとって必要のない付加機能やサービスは価値にはなりません。また、付加価値を高めるためには、戦略とコストと人材が必要になります。ここを間違えば、結局のところ、苦労をしてお客さんに評価されないということになりかねません。

 

付加価値とは、高い製品のことなければ、値段を上げることでもありません。

 

この記事では、付加価値に関する誤解を解き、中小企業の付加価値について考えてみます。

 

 

ビジネスモデルの考え方は、下の図のようになります。この記事では、赤の矢印のビジネスモデルについて考えます。

 

 

 

 

 

  • 付加価値における誤解

一般的に、「高付加価値」=「高価」という図式があります。また、品質やサービスのレベルを上げることで価値を提供しようとしても、お客さんが評価しなければ、コストが上がるだけで価格に反映できません。これでは、逆に価値を下げていることになります。

 

例えば、

 

1着10万円のオーダースーツ

1着1万円の既製品スーツ

 

どちらの付加価値が高いでしょうか?

 

オーダースーツは1ヶ月に30着作れるとしたら、売上は300万円。製造にかかるコストが、材料や人件費で1着あたり7万円とすれば、付加価値は90万円ということになります。

 

既製品スーツは300着作ることができて、売上は300万円。材料、設備、人件費が1着あたり6,000円だと付加価値は120万円です。

 

この場合、1万円のスーツの方が付加価値は高いと言えます。

 

では、価格を上げるために、オーダースーツの生地をイタリア製の高級品に変えたとします。材料費が3万円上がった場合、3万円以上の価格に転嫁できなければ付加価値を落としたことになります。

 

一方で、1万円の既成スーツの生地を化学繊維に変えて、洗濯ができる仕様にしたとします。材料費が3,000円上がったら、3,000円以上の価格に転嫁できれば付加価値が上がったと言えます。

 

高級イタリア生地のオーダースーツが15万円

洗濯機で洗えるクリーニング不要のスーツが15,000円

 

どちらが売りやすいでしょうか?

 

また、売れた場合、どちらが生産しやすいかということも付加価値のポイントです。オーダースーツの職人を育成することと、設備を増設することを比較した場合、付加価値戦略の方向は見えてきます。

 

ここで紹介したスーツは、すでに大手量販店で採用されている製品ですね。必ずしも価格が高いことが付加価値ではないということです。

 

 

 

  • 販売店でも付加価値を提供できる

ここまでは製造業の付加価値について説明しました。

 

この説明をすると、「販売店はどう付加価値をつければいいのか?」という質問を受けます。

 

例えば、あなたが食品店を経営しているとします。

 

どのような商品を置くのか。

価格をどうするのか。

接客は?

 

など、付加価値を高める方法を考えることができます。

 

 

 

  • 品揃えを増やすか減らすか

食品店のひとつの付加価値は、置いている商品による差別化です。

 

一般的な食品店は、多くのものを安く販売することで差別化をはかります。いわゆるスーパーマーケットのビジネスモデルです。しかし、このままでは価格競争になるので、バイヤーの仕入れ力が重要になります。安く売るために仕入れ先を開拓するということです。

 

複数の会社がグループになって共同購入を行う支援するCGCグループも新しいビジネスモデルだと言えます。

 

CGCグループの加盟店では、商品の開発や調達、物流、情報システム、販売促進、教育などを協業しています。加盟しているスーパーマーケットは全国各地に約220社4,000店と、日本最大規模といわれる協業組織になっています。

 

単独でコストを下げている企業もあります。

 

コストコは、大量に買ってもらうためにワンパックのサイズを大きくして、コストを下げています。また、同規模のスーパーと比較して、品揃えの少なさも特徴的です。

 

品揃えを減らして、大量に買ってもらうことで、割安感があり、在庫回転率も高まります。

 

※コストコの会員制ビジネスモデルについては、別の機会で解説します。

 

 

品揃えと品質に工夫を凝らしたビジネスモデルを展開しているのが成城石井です。

 

ワイン、チーズ、生ハム、紅茶、コーヒー、オリーブオイル、ジャム、味噌、牛乳、豆腐、納豆、昆布、鰹節、ダシ、チーズケーキなど食品に強みがあります。一般的な有名なメーカーのものもありますが、成城石井でしか買えない商品が多数あります。

 

いいものがあり、選択肢が多いというのも付加価値となります。

 

また、成城石井では、惣菜は基本的に手作りされています。これも、高品質な食材を求めるお客さんのニーズをキャッチしています。

 

スーツの例で言えば、高級スーツの販売を成功させたと言えます。

 

 

 

  • コンビニエンスストアの品揃え

次にコンビニエンスストアについて考えてみます。

 

コンビニは、わずか平均30坪足らずの小さな店で、高い収益を上げる付加価値の高いビジネスモデルです。

 

コンビニとスーパーが並んでいても共存できます。

置いてあるものは同じで、スーパーの方が安いにも関わらず、コンビニに足を運ぶ人はいます。

 

理由は利便性です。店舗が小型だからこそ入りやすい。しかも、買い物以外の用事を済ませることができます。つまり、食料品店、弁当店、コーヒーショップ、酒店、たばこ店、日用品店、文具店、書店、銀行、郵便局、宅配会社、役所、写真店が一箇所にあることと同じです。

 

商品だけでなく、入りやすさ、買いやすさで付加価値を提供することもできるのです。

 

 

 

  • 取り扱い品目を増やすドラッグストア

盤石に見えたコンビニエスストアのビジネスモデルを揺るがすとしたら、ドラッグストアです。

 

近年のドラッグストアは、薬や健康食品はもちろん、お菓子やドリンク、食品などの品揃えを増やしています。また、生鮮野菜や精肉販売を手掛けている店舗もあり、買い物に来るお客さんを取り込んでいます。

 

また、24時間営業の店舗もあり、価格も安いので、コンビニの脅威となります。今後、お弁当や惣菜の品質が上がれば、お客さんが流れる可能性があります。

 

クスリのアオキのチラシを見ると、スーパーマーケットのように見えます。

 

 

 

 

  • 品目を絞って専門性を高める

品目を絞って、専門性を高めることで付加価値を生み出すビジネスモデルもあります。典型的なのは、お酒のディスカウントストアーです。

 

さらに絞って、全国の日本酒、世界のワインなど、入手が難しい商品を揃えることで付加価値を生み出すこともできます。

 

 

 

  • 自家製の製品を製造する

特徴的な製品を製造して販売するビジネスモデルもあります。

 

大分県佐伯市で江戸時代から325年続く老舗『糀屋本店』。

 

こうじは三大酵素を含んでいます。でんぷん質を糖(甘み)に分解するアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸(旨み)に分解するプロテアーゼ、脂肪を分解するリパーゼだ。酵素は消化を助け、免疫を高める働きがある。おいしいだけでなく、体に良いことも塩糀のアピールポイントになったと想定できます。

 

製品の価値を再定義することでも付加価値を生み出すことはできるのです。

 

『糀屋本店』のホームページ

https://www.hounokoujiten.jp

 

 

 

  • 販売方法で付加価値をつける

販売方法で付加価値を高めることもできます。

ゲーリー・ヴェイナチャック氏はニュージャージー州スプリングフィールドにある父親の店「Shopper’s Discount Liquors」を引き継ぎます。店の名前を「Wine Library」に変え、オンライン販売を開始。そして2006年に、ワインを紹介するWine Library TVと題する毎日放送されるウェブキャストを開始します。番組を起点に、電子コマース、電子メールマーケティング、価格戦略を組み合わせ、300万ドルだった事業を6000万ドルにまで成長させたと言われています。

 

ワインを楽しむためには知識が必要です。その知識を提供することで、付加価値を生み出すことができました。また、通信販売によって、お客さんの利便性を高めたことも付加価値と言えます。

 

参考記事

https://ja.wikipedia.org/wiki/ゲイリー・ヴェイナチャック

 

 

Wine Library TVはこちら

https://tv.winelibrary.com

 

 

 

  • 売り方を変える

売り方を変えることでも付加価値を高めることができます。コンビニは便利ですが、コンビニにすらいく時間かないビジネスマン向けに、お菓子を提供する「オフィスグリコ」。

 

小さなお店をレンタルするような仕組みは、コンビニよりも高い利便性を実現しました。

 

価格設定も絶妙で、100円というポッキリ価格は支払いやすく、代金回収にも優れています。ディスカウントストアでは、80円で買えるものでも、買いやすさという付加価値に転化することができています。

 

他にも、エリアを品目を絞った販売方法で付加価値を提供している会社があります。

 

銀座チャームは、『銀座のパブ・クラブ専門のお菓子・おつまみのデリバリー』を展開しています。電話1本で即日配達してくれる銀座のパブ・クラブ専門のお菓子・おつまみのデリバリーのお店です。

 

常時150種類以上の品揃えで、お菓子1袋から無料配送しています。その他、季節商品(ハロウィン・クリスマス・七夕・桜祭り等のイベント用のお菓子)も用意されており、小売店よりも格安の価格でしかも無料スピード配達。電話をしてからから5分〜30分位で届けてくれるようです。

 

つい、おつまみ(チャーム)が切れていたり、お客さんの好みと違うこともあります。そんな時に、お店のスタッフに買いに行かせるよりもコストを抑えることができます。

 

 

 

まとめ

この記事では、付加価値を高めるビジネスモデルについて考えてきました。付加価値とは高い価格の製品やサービスのことではありません。収益性を高めるビジネスモデルのことを言います。ここで紹介した8つのパターンを参考に付加価値の高いビジネスモデルを構築してください。

 

 

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この記事の執筆者

別所諒
・社長の味方コンサルタント
・株式会社経営戦略パートナーズ代表取締役
・心理カウンセラー

著書
「普通のサラリーマンが年収1000万円になる方法」

「がんばっても成果は出ない」

中小企業の2代目社長のサポーターとして、経営、マーケティング、組織開発の相談に乗っている。

 

 

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