新幹線の重大インシデントに学ぶ中小製造業の11の対策

 

 

あなたの会社の安全対策は万全でしょうか?

事故対策は万全だけど、社員が対策を守っていないとしたら?

 

あなたの会社の現場で重大な事故が発生するかもしれません。

 

重大インシデントというリスク用語があります。

重大インシデントとは、航空、鉄道、船舶の交通における、「事故が発生するおそれがあると認められる事態」のこと。通俗的には「あわや大事故」となりかねなかった事態というように理解されています。

重大インシデントは、製造業であればどの会社にも潜んでいるリスクです。この記事では、中小の製造業におけるリスクについてお話をします。

 

 

新幹線で起こった重大インシデントとは?

最初に、新幹線の重大インシデントの概要をお伝えします。以下は、JR西日本のホームページから転載します。

 

概要
2017年12月11日(月曜日)、「のぞみ34号」〔博多駅(13時33分)発 東京駅(18時33分)行き 16両編成〕において、走行中に異臭と床下からの異音を認めたため、17時3分ごろ、名古屋駅で床下点検を実施しました。点検の結果、13号車歯車箱付近に油漏れを認めたため、前途運休としました。

また、その後の点検において、当該台車に亀裂および継手の変色が確認されました。

 

今後に向けて

○ 車両点検

○ 社員教育

 

以上に加えて、社長を委員長とする「新幹線安全性向上委員会」を12月16日(土曜日)付けで立ち上げました。本件の原因究明と再発防止に向けた調査、対策の策定および実施を進めるとともに、新幹線の安全性向上を図ってまいります。

 

具体的な対策の中身は、次のようになっています。

・ 異常が無いことを確認できない場合は、躊躇無く 列車を止めることを徹底する

・ 今回の事象を踏まえて「音、モヤ、臭い」等が 複合的に発生した場合は、直ちに列車の運転を見 合わせて車両の状態を確認することを徹底する

・ 現地の状況がより正確に指令員に伝わるように、コミュニケーションツールの活用を検討する

引用元
https://www.westjr.co.jp/press/article/2017/12/page_11639.html

さて、あなたの会社が重大なクレームを受けた時に、クライアントに出す事故対策書をして、上記の文面で了承が得られるでしょうか?

 

場合により、取引停止を宣告されるかもしれません。

中小企業の場合、クライアントをなくすということは、経営的に致命的です。

ここからは重大インシデントが起こる原因と起こさないための対策についてお話をします。

 

 

重大インシデントが起こる11の理由と対策

重大インシデントが起こる理由1:
「このくらいはいいか」という考え

重大インシデントが起こる最も大きな理由は、「このくらいは大丈夫」という意識でしょう。

以前、ある会社でカッターを使ったら、すぐに指定の場所に戻すというツールが守られずに事故が起こったことがあります。ある社員は、すぐにカッターを使うので、出荷荷物の上に置きました。そこに上司から呼び出しがあり、席を離れます。他の社員が荷物の梱包をする時に、気づかずにカッターを箱の中に入れてしまったのです。カッターはお客様に届いてしまい、クレームをいただくことになりました。

 

ルールが決まっていても、「このくらいでいいか」という意識が重大インシデントを引き起こします。どんなに些細なことでも、ルールを徹底することが大切です。このケースの場合、人的なチェックではクライアント企業の承認を得られず、大規模なセンサーを設置することになりました。

 

重大インシデントが起こる理由2:
損金が発生しないとミスではないという考え

サラリーマンが恐れるのはミスです。かつ、損害が発生するミスは自分を評価を下げることを認識しています。ですから、多くの社員はミスをしないように仕事をしていますが、人間ですからミスを起こすこともあります。

 

その際、クライアントから指摘があり、上司にクレームが入ったり、値引きを要求されれば、自分で処理をすることができません。こうした場合は、会社に報告をするしかありません。

しかし、クライアントとの話で、「今回はいいけど、次は気をつけてね。」と担当レベルで話がまとまった場合、報告は本人で判断ができるようになります。多くの場合、ミスで評価を下げることを恐れ、報告がなされません。

 

ある企業で次のような話がありました。

 

クライアントから、運送は「A社を指定し、午前中必着」という指示がありました。この会社では、B社を使っていました。価格も安く、時間通りに荷物が届区からです。A社は高いし、時間も指定できない。ということで、B社で荷物を送りましたが、クライアントからクレームが入りました。クライアントにはA社にしなければならない理由はあったのだと思います。荷物は指定どおりに着いたのでその時は問題になりませんでした。しかし、翌月に同じ仕事でまたしてもB社で送ってしまったのです。今後はクライアントが激怒し、上司にクレームの電話を入れました。1回目のミスの報告を受けていない上司は、「会社としてどうなっているのか?」と厳しく叱責されることになりました。

しかし、同じミスを2回繰り返したら、クライアントは怒ります。会社への連絡も「2回目ですよ。どうなっているんですか?」と会社の体質を疑われてしまうかもしれません。

 

こうした事故を防ぐ理由は、「損金が発生しないクレームもクレームである」という社内意識を徹底し、報告を義務化することです。

 

重大インシデントが起こる理由3:
厳しい納期対応

重大インシデントを引き起こす原因のひとつは、厳しい納期対応です。時間的なプレッシャーに押されて、不適格品の出荷やチェック工程がいい加減になることで、品質基準に満たない製品が出荷されてしまうことがあります。

 

 

重大インシデントが起こる理由4:
人員不足

仕事に関わる社員数が少ないことで、一人に関わる負担が大きくなります。仕事がきつくなると集中力が途切れがちになります。また、人件費の安い外国人を採用している場合、任せることができる仕事が限られます。人員に余剰がないことも重大インシデントを引き起こす原因となります。

 

 

重大インシデントが起こる理由5:
コスト削減司令

厳しいコストダウンの指令を出すことで、機械の部品や原材料などの仕入れ品の品質が落ちることがあります。これも重大インシデントの原因となります。

 

 

重大インシデントが起こる理由6:
ミスを責める企業風土

作業ミスを責めたり、罰金制度などがある会社では、社員はミスを隠蔽しようとします。ミスの報告がなされません。結果、大きなクレームや事故が引き起こされることになります。JR西日本で起きた脱線事故は、運行時刻が遅れると、「懲罰的な再教育」が実施されており、再教育を恐れた運転士が遅れを取り戻すためにスピードを上げたことが原因のひとつとなっています。

 

 

重大インシデントが起こる理由7:
安全を守るための投資が不十分

JR西日本では、宝塚線の脱線事故以降、国土交通省の指示で速度超過を防ぐ自動列車停止装置を装備しています。しかし、新幹線の運行管理においては、JR東日本よりも遅れていたと言えます、JR東日本では、走行中の台車の異常を温度上昇で感知するセンサーが備え付けられています。

 

人的なチェックはもちろん、システムやセンサーなどによる安全への投資も大切です。

 

重大インシデントが起こる理由8:
報告管理の不徹底

朝礼や昼夜の作業の引き継ぎが形骸化しており、事務形式的になっていることがあります。引き継ぎはなされているものの、重要な内容が伝わっていないことで、重大インシデントが起こることがあります。

 

 

重大インシデントが起こる理由9:
品質へのこだわり不足

品質の基準が、規格の最低限をクリアすることになっていることがあります。より良い製品製造をする意識が不足し、規格をクリアできていない製品が出荷されることがあります。新入社員が入るたびに品質基準の徹底を行う必要があります。

 

 

重大インシデントが起こる理由10:
コミュニケーション不足

部署間のコミュニケーションが不足していることも重大インシデントの原因となります。営業と製造の連絡の不徹底はもちろん、製造ラインでもクレーム内容が共有されていない場合、別の社員が同じミスをすることがあります。

 

 

重大インシデントが起こる理由11:
対策が遅い

大きなクレームが起こった場合、そのクレームへの対応はするものの、全社としての対策会議の開催や対応が遅く、雪崩式に次の事故が起こることがあります。事故が怒った場合や、事故になりそうな事案の場合、速やかに対策を立てることが大切です。どんなに忙しくても、先延ばしにしてはいけません。先延ばしは、二次災害の原因となります。

 

 

重大インシデントに備える対策

以上を踏まえて、重大インシデントに備えるための対策を考えます。

品質意識、工程管理の徹底などはもちろんですが、ポイントは次に3つになります。

 

1:すぐに対策を立てる

2:社員恐怖で縛らない

3:言いたいことが言える会議を設定する

4:社内共有

 

 

まとめ

この記事では、新幹線の重大インシデントに習い、中小企業で起こりうる11のミスおよび事故の原因についてお伝えしました。

管理工程がしっかりとしていても、社員の意識により、ミスは発生します。大切なことはミスを起こさないだけでなく、起こった時の対応です。そのためには、社員が報告をしやすい雰囲気を作ることが第一だと思います。

 

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この記事の執筆者

別所諒
・社長の味方コンサルタント
・株式会社経営戦略パートナーズ代表取締役
・心理カウンセラー

著書
「普通のサラリーマンが年収1000万円になる方法」

「がんばっても成果は出ない」

中小企業の2代目社長のサポーターとして、経営、マーケティング、組織開発の相談に乗っている。

 

 

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