企業の倒産とは、所有している現金(資産)を支払うべき現金(債券)が上回った状態のことを言います。この状態で、金融機関の助けを得ることができず、債権者が支払いの猶予を了承しない場合、企業は倒産します。
企業の倒産の理由の第1位は販売不信です。第2位は、既往(きおう)のしわ寄せとなっています。
この記事では、既往のしわ寄せとは何か?どうすれば既往のしわ寄せの兆候をつかむことができるのかについて考えます。
目次
既往のしわ寄せとは何か?
既往のしわ寄せとは、経営状態が悪化しているにもかかわらず、具体的な対策を講じないまま過去の資産を食い潰してくことで倒産に至ることを言います。
俗に、「ゆでガエル」状態と言われますが、直接的な原因が掴みにくく、いくつかの要因が重なっているため、対策が遅れがちです。
「気付いた時には遅かった」というのが既往のしわ寄せです。つまり、過去の資産を食いつぶした状態と言えます。
手遅れになる前に、既往のしわ寄せの兆候を考えてみます。
1:売上の減少
売上がだんだんと下がっている状態は、既往のしわ寄せの釣行です。不景気になると、前年対比が95%でも仕方がないかと思いがちです。景気がよくなれば、売上も回復するだろうと、楽観的な見方をして対策が遅れます。
ほんの少しでも売上が下がるということは企業にとって大問題です。どんな景気でも儲けている企業はあります。こうした企業は時代を捉えています。一方で、売上が減少しているということは、時代に合っていないということです。
例えば、30億の会社が前年比95%になったとします。28.5億です。翌年は27億。3年後には、25億となります。17%ダウンなので、大幅なリストラを断行しなければ利益を出すことはできません。しかし、内部留保で赤字を補うことができる場合、対策を講じない経営者がいます。
売上とは、世の中に必要とされることで生まれるので、どんな景気であっても売上が下がるということは、社会に必要とされなくなっているということです。
業界の市場が縮小している場合は、危機感を強める必要があります。
2:古い設備を使い続けている
設備が古くなっても、生産は可能です。熟練の職人は、それなりの品質の製品を仕上げるので、特に問題が起こってはいません。設備投資をしなければ、売上が下がっても利益を出すことができます。
しかし、古い設備を使い続けることはリスクを伴います。
・品質が徐々に低下している
・故障により生産計画が狂う
狂った生産計画をカバーするために外注に出すことで、コストが上がり、社員の仕事がなくなるという事態になります。
他社と比較して品質が劣っている場合、新規の受注が難しくなります。
積極的な」設備投資を行うか、企画・設計などに力を入れ、製造はアウトソーシングするなど、経営の方向を決めておくことが大切です。
3:社員の高齢化
人手不足も深刻な状態を引き起こします。社員が高齢化している場合、仕事のスピードが落ちることがあります。また、頑固な職人肌の社員が多い場合、顧客のニーズに応えきれていないこともあります。
また、病気や退職により、人員が不足することがあります。
人件費を抑えるために、海外の実習生を採用している企業もあります。しかし、彼らは実習生です。安い労働力ではありません。
社員の平均年齢が業界水準と比較して高い場合、対応力で劣っている可能性があります。人件費は上がり、品質が落ちているかもしれません。
4:人材育成をしていない
社内にはベテラン社員が中心となり、欠員は中途採用で補っている。しかし、定借する人は少なく、ベテラン社員が現場を担当している状態では、10年後は危うくなっているかもしれません。
10年は長く感じるので、そのうちに手を打とうと思いながら、数年はあっという間に過ぎてしまいます。特に、製造業の場合、10年で世代交代をしても、若手を育てていない場合、品質と生産性が下がります。
若手を採用し、育成する文化を作ることで、長期的な経営を考えることができます。
社員の年齢でベテランに偏りがある場合は、若手社員の採用を考えてください。すでに人件費が経営を圧迫している場合、既往のしわ寄せ状態になっていると言えます。
5:少数の得意先に頼っている
長らく同じ得意先からの注文で成り立っている企業の場合、得意先の事情により大きく売上が下がることがあります。
自動車の不正問題で販売数が落ち込み、下請け企業は大打撃を受けました。また、コストを重視して海外に発注拠点を移すことで、仕事がなくなることもあります。
長い付き合いは、信頼の証ですが、得意先が集中している場合は、危機感を持った方がいいでしょう。
6:値引き要請
得意先からの値引き要請に応じている場合も、危険信号です。特に、設備が古く生産性が悪いにもかかわらず、ベテラン社員の技量で納品が出来ている場合は、コストがアップして、利益を大きく減らしていることがあります。
7:先送り
既往のしわ寄せの最も大きな原因は、経営者が異変に気づいているのに、手を打たず、楽観的に先送りをしていることです。
数字だけを見るのでなく、社内の様子に気を配ることが大切です。特に、頼りになる幹部がいる場合は、社長が彼らに飲み指示を出して、現場を見ていないことがあります。
優秀な幹部でも、既往のしわ寄せをカバーするほどの対策を講じることはできません。あくまで落ち込みを最小限にしているだけなので、落ち込んでいることには変わりがありません。
会社にいる時間の少ない社長は、危機感が必要です。
まとめ
この記事では、既往のしわ寄せについて、その兆候の見極め方をお話ししました。全ては、事前に手を打つことで回避できる内容です。楽観的な予想をせず、危機感を感じたら、すぐに確実な手を打つことが大切です。