経営者が押さえておきたい解雇のルール

 

 

トラブルにならずに社員を解雇するにはどうすればいいのか?

 

業績が厳しい経営者はもちろん、これから成長していく会社でも、スキルが高く、一生懸命に仕事をしてくれる社員にいて欲しいものです。スキルが不足しているだけならともかく、社員の士気を下げるような振る舞いをする社員は時には退職させる必要が出てくることもあります。

 

しかし、社員を解雇する場合は、しかるべき手順や理由があり、トラブルになると、逆に残った社員に士気を下げてしまいます。

 

この記事では、トラブルにならずに社員を解雇する方法について考えてみます。

 

 

社員を解雇することは悪ではない。

会社を解雇されるというのは、社員にとってはただ事ではありません。経営者にとっても心が痛みます。

 

これまで一度もリストラをしたことがないという名経営者もいるにはいます。

しかし、中小企業の場合、戦力にならない社員を残しておくことで、会社の成長を阻害します。

 

社員を解雇する時に、経営者が心しておきたいのは、

 

「社員=悪」ではない。

「解雇する社長=残酷」でもない。

 

ということです。

 

社長から見て仕事をしない社員を解雇したいと思った時、「この社員はダメな奴だ」と思いがちです。しかし、あなたの会社の仕事では戦力にならなかっただけで、他の会社では戦力になるかもしれません。

 

また、仕事をしない人が人間的にダメなわけでもありません。仕事以外の価値観の中で立派に生きていくかもしれません。

 

大切なことは、社員の評価に善悪を持ち込まないことです。

 

 

 

解雇の種類

社員の解雇には3つの種類があります。

 

1:整理解雇

会社の業績が厳しく、経費削減のために人員削減をする場合を言います。

 

整理解雇は、法律で定められてわけではなく、労働慣習上の用語です。ですから、妥当性は裁判での判例をもとにするしかありません。

 

おおむね、以下の4つの要件を満たせば、正当性があると判断されます。(「整理解雇の四要件」)

 

  • 人員整理の必要性

経営上、人員削減の必要性があることです。経営不振は認められますが、黒字の状態でさらなる効率を上げるためというのは認められにくくなります。

 

  • 解雇回避努力

解雇以外の経費削減、役員報酬カットなど、解雇を実施する前に経営努力をしていること。

 

(3)合理的・公平な人選

解雇する人選が評価者の主観に左右されず、合理的かつ公平であること。

 

  • 解雇手続の妥当性

本人または労働組合と協議・説明が行われていること

 

 

2:懲戒解雇

会社の秩序を乱した社員に対しておこなわれる解雇を懲戒解雇といいます。

 

懲戒解雇を行うためには、

 

・就業規則に、懲戒の内容と種別を記載しておくこと

 

・懲戒解雇の対象となる事実確認

 

が必要になります。

 

つまり、社長が感情的に「クビだ」と解雇することは妥当性に欠けるということです。不当解雇として逆に訴えられることもあります。

 

 

3:普通解雇

上記以外の理由で行う解雇を普通解雇といいます。

 

一般的には、就業規則違反(遅刻、欠勤、勤務態度など)が理由となりますが、解雇が妥当かどうかは抽象的です。

 

要は、解雇した社員が訴えを起こさないことと起こされた場合の対策を事前に立てておくことが大切だということです。

 

 

 

解雇が禁止されている場合

解雇の妥当性は裁判所で判断されます。一度の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、社員の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の大きさ、過失か故意かなど、状況に応じて判断されます。

ただし、すでに法律で禁止されている場合もあるので、以下の点に抵触しないことが大切です。

 

<労働基準法>

業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇

産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇

労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

 

<労働組合法>

労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

 

<男女雇用機会均等法>

労働者の性別を理由とする解雇

女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇

 

<育児・介護休業法>

労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

 

出典:厚生労働省ページ

 

 

 

 

解雇を実施するまでのルール

経営者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。 明確な記載がない場合は、社労士などと相談をして、就業規則を変更し、社員に説明をしてから、解雇に動かなければ、訴えを起こされた時に不利になります。

 

合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。

 

予告を行なっていない場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。

 

 

 

自己都合と会社都合の退職について説明をする

解雇は基本的に会社都合による退職です。

 

しかし、一般的な労働者は、自己都合の退職と会社都合の退職についての知識を持っていません。

 

会社からの解雇通告を受けているにも関わらず、「退職届」を提出することで、自己都合退職になることも知らない人が少なくありません。

 

経営者にとっては、助成金や企業のイメージなど、自己都合による退職が好ましいですが、解雇をしたにも関わらず、退職届を受理した場合は、後々トラブルになることもありますので、社員には説明をしておく必要があります。

 

逆に知識のある社員が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません。

 

 

<会社都合退職のメリット>

 

・「解雇予告手当」を受け取れる

 

解雇予告の日数が30日未満の場合、「解雇予告手当」を受け取れる場合もあります。

 

・失業手当を早く、長くもらえる

 

自己都合退職に比べて、失業給付金(失業手当)の支給が早くなります。会社都合退職の場合には、待機期間7日間+約1カ月後に第1回目の支給を受け取ることができます。

また、雇用保険の被保険者期間や年齢によって異なりますが、自己都合退職の給付日数90~150日に比べて、会社都合退職の給付日数は90~330日と長く設定されています。

 

 

<デメリット>

 

退職の理由が「解雇」となると、実力不足、就労態度の問題、人間関係上のトラブルなどがあったのではないかと再就職先が不信に思います。

ハローワークで転職先を探す場合、「会社都合退職」の文字が経歴上に残ることを伝えておきましょう。

 

自己都合であるにも関わらず、会社都合にして欲しいと依頼をしてくる社員もいるので、その場合は、「ハローワークで相談をして欲しい」と言い、応じない方が賢明です。ハローワークでは、自己都合の退職を会社都合として認めているケースもあります。

 

 

 

このケースは自己都合か会社都合か

犯罪行為や不正行為に伴う懲戒解雇は、自己都合となります。

 

早期退職の募集は会社都合となります。

 

パワハラなどで、自己都合で退職届を出しても、会社都合をして認められるケースもあります。

 

業績不振で先行きが不安なので、退職をするケースは、給与額の85%以下でない場合は、自己都合となります。もちろん、給料の未払いなどは、会社都合をなります。

 

会社の方針にあわない、営業成績の悪さ、向上心ややる気が感じられないなどの社長の主観的な解雇は不当解雇を判断されることがあるので、注意が必要です。しかるべき事由を明確にしておく必要があります。

 

 

 

労働基準法を守っておく

「労働基準法改正案」が出され、残業時間や働き方について大きな変化があります。中小企業の経営者にとってのリスクは、解雇した社員に訴えを起こされることで、労働者の相談機関や弁護士に対応しなければならないことです。

 

また、労働基準監督署の立ち入りも、経営にとってプラスとは言えません。

労働基準、雇用における就業規則は万全にしておくことが大切です。

 

企業経営で大切なことは、社員が働きやすい環境を作ること。その代償として、経営者の期待する成果を出してもらうことです。

 

働き方改革について中小企業で対応しておきたいことは「中小企業が働き方改革を導入するために最も大切な3つのこと」記事を参考にしてください。

 

 

 

まとめ

この記事では、解雇のルールについて紹介しました。戦力にならない社員を雇い続けるのは経営リスクとなります。しかし、解雇の方法を間違えると、訴訟になるか寝ません。社員の解雇を考えたら、ルールをしっかりと守りながら、実行をしていただきたいと思います。

 

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この記事の執筆者

別所諒
・社長の味方コンサルタント
・株式会社経営戦略パートナーズ代表取締役
・心理カウンセラー

著書
「普通のサラリーマンが年収1000万円になる方法」

「がんばっても成果は出ない」

中小企業の2代目社長のサポーターとして、経営、マーケティング、組織開発の相談に乗っている。

 

 

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