中小企業の社長において、最も大切な仕事はマーケティングです。
どんなビジョンがあろうが、社会貢献を語ろうが、利益を出さなければ会社は潰れます。
社長の仕事は利益を出して、会社を継続させることだとしたら、その基礎となるのがマーケティング活動です。
しかし、ほとんどの中小企業の社長はマーケティングに関心がなく、知識もないので最も大切な活動を社員が外部に任せてしまっています。
この記事では、中小企業のマーケティングは社長がやるべき9つの理由をお話しします。
目次
1:社長の仕事はマーケティング
最初に、マーケティングとは何かということをお話ししたいと思います。様々な定義がありますが、ここではマーケティングとは「お客を創る作業」とします。
売上を簡単に上げていく会社と停滞する会社の違いは、社長がマーケティングに精通しているかどうかです。特に、売上の大半を特定の会社に依存している企業では、その会社からの発注がなくなれば即死です。
しかし、社長がお客さんを創る方法を知っていれば、売上アップに困ることはありません。
社長の仕事はお客さんを創ることであり、その活動がマーケティングなのです。そう考えれば、社長にとってマーケティング以上に大切な仕事はないと思います。
2:「○○屋さん」でなくマーケッターになる
「あなたは何屋さんですか?」と質問をされると、たいていの社長は「○○業」「○○屋」と答えます。ラーメン屋、印刷屋、保険屋、治療家など。
答えが間違っているわけではありませんが、商品やサービスを中心に考えると、その業界が廃れた時に会社も沈んでしまいます。
例えば、あなたが自分を下駄屋さんだと考えたとします。しかし、下駄の販売数は靴の出現で減少しています。そんな時に、自分を履物屋と考えれば靴も扱うことができます。また、日本の伝統文化の伝達者だと考えるとさらに扱う商品は多くなります。
このように考えることで、下駄の販売数が少なくなってもお客さんを創ることはできます。
下駄屋だと定義しても、これまでにないおしゃれな下駄を考えることで、下駄を履かなかったお客さんを創ることができれば、売上を落とすことはありません。
このように、お客を作るのが仕事なので、社長はマーケッターであるべきです。
マーケッターの仕事は、商品ではなく、お客さんを見ることです。
優秀な経営者が違う業界に移っても業績を上げることができるのは、彼らが経営者であると同時にマーケッターであるからです。
3:商品開発よりもお客を集める仕組みが重要
いい商品でも売れなければガラクタと同じです。逆に品質に劣っても売ることができれば利益が出ます。出した利益を投資して、商品をよくしていけばいいので、大切なことは商品作りよりも売ることです。
競合を分析する時、マーケッターは商品ではなく、販売方法を分析します。
例えば、昨今、出版不況と言われます。特にビジネス書は売れないので、各社は売れそうな企画を練り、タイトルを考えます。また、すでに実績のある著者に依頼することでリスクを軽減します。だから同じようなタイトルの本が書店に並びます。
一方でダイレクト出版という会社は、会員制で毎月1冊の本を届けるというサービスを展開しています。会員の数だけ確実に本が売れるので、在庫リスクはありません。また、ユーザーに直販するビジネスモデルを採用しているため、返品もなく、取次や書店へのマージンも必要ありません。本の価格も1冊あたり2,980円からと高価格になっており、不況と言われる出版ビジネスにおいて異彩を放っています。
このビジネスモデルは、食品などの定期お届けサービスとしては目新しいものではありません。しかし、出版業界では採用している会社はありません。
このように、マーケッターは、他業種の知見を合法的に拝借することで利益を出す仕組みを構築しています。
4:お客は社長が決める
マーケッターとしての社長の仕事の第一は、お客さんを決めるということです。誰にでも販売できるという商品は、自動車、ファストファッション、ファミリーレストランのように大企業のビジネスモデルです。
中小企業はニッチに絞り、自社の強みを活かすことが大切です。中小企業の儲けはニッチにあるのです。
お客を決める作業をペルソナの設定と言います。
ペルソナとは、商品・サービスを利用する顧客の中で最も重要な人物モデルのことを言います。
ペルソナの設定で成功した企業の事例としてよく紹介されるのが、Soup Stock Tokyoです。Soup Stock Tokyoは「秋野つゆ」という架空の人物を生み出し、詳細なマーケティング戦略を行ったことで業績をあげています。
秋野つゆ
基本情報
名前: 秋野つゆ(37歳) 女性
・都内在住
・独身か共働きで経済的に余裕がある
・都心で働くバリバリのキャリアウーマン
特徴
・社交的な性格
・自分の時間を大切にする
・シンプルでセンスの良いものを追求する
・個性的でこだわりがある。
・装飾より機能を好む
・フォアグラよりレバ焼きを頼む
・プールに行ったらいきなりクロールから始める
ペルソナを基に、店舗の立地、装飾、メニューが考案されています。ですから、Soup Stock Tokyoは都心にあり、ほとんどの利用者が女性になっています。
5:見込み客が振り向くメッセージを考える
ペルソナの設定が決まれば、次はどのようなメッセージを出すのかを考えます。ここでは、コピーライティングの技術が必要です。
コピーライティングとは、人に行動を促す文章構成のことを言います。
無から有を生み出すのではなく、コピーライティングには型があります。
・読んだ人が得をする情報
・読んだ人が損を回避する情報
であることが前提です。
ですから、「うちの商品はこんなに優れている」という文章は効果的ではないことがお分かりかと思います。
「あなたが・・・(得をするか損を回避する)となります。」
が基本形です。
コピーライティングの技術を身につけることは会社の売上を大きく伸ばすポイントになります。
コピーライティングの型についてはこちらの記事を参考にしてください。
「すぐに使えるコピーライティングの型6選」
6:広告宣伝は外注に丸投げしない
マーケティングのひとつの要素に広告宣伝があります。
特に、インターネットの広告は多様化しており、どの方法を選ぶのかが難しくなっています。だからこそ、広告宣伝を安易に外注することなく、自社のノウハウをして残していただきたいと思います。
SEO対策、PPC広告、facebook、Lineなど、それぞれの専門家は自分の専門分野が一番と言います。
当社では、インターネットで集客する方法をお伝えするセミナーを定期的に開催しています。その募集方法は、実はFAX―DMです。
インターネットの広告は競争が激しく、情報もどんどん公開されています。一方で私たちのお客さんになる社長は、インターネットのことがわからず、ホームページも作ったまま放置している社長です。こうした社長は積極的に情報を集めるために検索をしないので、PPC広告に効果はありません。
一方で、社内に送られてくるFAXには目を通しています。ですから、私たちはインターネット集客のセミナーの集客をFAXで行なっているのです。その結果、ある特定に業種の反応が高いことがわかりました。それ以来、私たちは、その業界に特化してFAX―DMを流し続けて集客をしています。
7:計測する
マーケティングを成功させるポイントは、計測するということです。
いくらの広告予算で、何名の見込み客が獲得できるのか(CPR)
その内何名が購入してくれるのか(CPO)
を把握しておきます。
これは、通信販売のビジネスモデルとして一般的です。
例えば、予算が100万円の広告の場合、100名のお客さんを獲得できたら一人当たりの顧客獲得コストは1万円となります。1万円以上の利益が出るとしたら、後は広告費を投入するほど売上が上がります。
通販の場合、初回で利益を出すのではなく、複数購入で利益が出る仕組みになっていることがあります。
問題は営業マンに売上を任せている企業です。
何件訪問して何件の受注ができるのかを計測していない場合、売れる営業マンは成果を出し、売れない営業マンは全く成績が上がりません。
営業マンの活動を計測し、受注率の低い営業マンには受注率の高い営業マンのセールスの方法を浸透させなければ、いつまでもどんぶり勘定になってしまいます。
8:フロントエンドとバックエンド
マーケティングの効果を高めるための商品づくりで大切なのは、フロントエンドとバックエンドの仕組みを作ることです。
あなたのことを知らない人に売る商品をフロントエンドと言います。
フロントエンドは、買いやすい、低価格商品で、お客さんのリスクを軽減したものにします。
通販の場合、初回お試し価格が設定されているのはこのためです。
信頼関係ができた後に売る商品をバックエンドと言います。こちらは高付加価値で利益性の高いものを投入します。
フロントエンドで利益を出す必要はありません。買いやすいものを買っていただき、本品は信頼関係ができた後に紹介します。
通販の場合、フロントエンドのCPOは商品価格を上回ることもありますが、バックエンドは電話でセールスができるので、販売コストがかかりません。
9:LTVを高めるフォローを仕組み化する
新規開拓には大きなコストがかかります。ですから、既存客にどれだけ長い間、多くの商品を買ってもらえるか(LTV)で会社の収益は決まります。
こうした大切なお客さんを営業マンに任せていたら、気づかない間にお客がいなくなるということも珍しくありません。
法人営業の場合、名刺を営業マンに管理させている場合、訪問しないまま宝が闇に葬られてしまいます。
必ず、顧客管理は会社で行うようにしてください。そして、定期的にメールやDM、ニュースレターを送付することで、営業マンに頼らない仕組みを作ることができます。
LTVを高める方法はこちらの記事を参照ください。
まとめ
この記事では、中小企業の社長がやるべきマーケティングの9のポイントを紹介しました。
強い会社とは、マーケティングに強い会社だと言えます。
ぜひ、参考にしたい会社のマーケティングを研究してください。
他人任せでないことがよくわかると思います。
社長がマーケッターとなり、会社を成長させてください。