【法人営業のコツ】個人営業との6つの違いと契約までの11のステップ

 

 

法人営業のコツを知らない営業マンを雇っていると経営者は苦労します。

 

いつもいい報告を聞くけど、ほとんど売上が上がらない。

結局、既存客からの売り上げだけ。

新規開拓に行っているはずなのに・・・

 

法人営業は基本ルート営業なので、積極的に新規開拓をしている会社は少ないと言えます。

 

新規開拓をしないで、既存客の御用聞きをしている営業マンは、営業力が上がりません。

 

新規開拓の研修を取り入れても効果はなし。こうしたことが起こる理由は、

 

・法人営業のコツを知らない

・講師が個人営業の専門家である場合、法人営業では役に立たない

 

ということです。

 

この記事では、法人営業のコツと個人営業との違いを解説します。

 

 

御社の法人営業レベルは?

ある印刷会社で実際に聞いた報告です。法人営業の参考になると思うので、コンパクトに紹介します。

 

営業マンAさんの報告

私「今日の新規訪問の目標を教えてください。」

Aさん「会社の説明をして、クライアントによい印象を持ってもらい、見積りをいただくことでした。」

私「結果は?」

Aさん「見積りはいただくことができませんでしたが、よい印象を持ってもらったと思います。」

私「よい印象とは?」

Aさん「私の提案に興味があると言っていました。」

私「見積りはもらえなかったのですね?」

Aさん「今日のところは強引には行きませんでした。仕事が出てきたら連絡をすると言っていましたから。少し待ってみて、連絡がなければもう一度こちらから連絡してみます。」

私「契約はできそうですか?」

Aさん「できると思います。」

 

さて、あなたは、この商談をどう評価しますか?

 

 

次は、営業マンBさんの報告

 

私「今日の新規訪問の目標を教えてください。」

Bさん「クライアントの問題を引き出し、2回目のアポイントを取ることでした。」

私「初回で決めようと思わないのですか?」

Bさん「もちろんラッキーなことはあります。しかし、印刷の営業は受注までに複数回のステップが必要になります。」

私「複数回のステップとは?」

Bさん「初回は、どんな印刷物を制作しているのかを見せてもらいます。そして、その印刷物にどんな印象を持っているのかをヒアリングします。不満や問題を抱えているようなら、不満を解消したら当社に発注してもらえるかどうかを確認します。そして、次回のアポイントを取ります。」

私「見積り依頼をもらわないのですか?」

Bさん「価格が問題になっている場合は見積りを出しますが、価格勝負だとたいていは勝てません。他の問題を見つけ出します。」

私「価格以外で勝負をすると?」

Bさん「もちろん、大幅に高いと商談は成立しません。ですから、当社であればこのくらいの価格になるとレンジは確かめます。」

私「問題は引き出せたのですか?」

Bさん「もちろん。次の商談の準備をします。」

 

違いがわかるでしょうか?

 

最も大きな違いは、目標設定です。法人営業の場合、初回の訪問で契約が決まるということはありません。この点を知っているかどうかで、成果は大きく違います。

 

Aさんはいい報告をするものの、何度クライアントに電話をしてメールをしても「もう少し待って」と言われ、そのうちに居留守を使われています。

 

Bさんは受注できると思った案件は確実に受注します。

 

 

 

法人営業とは

法人営業のコツを習得するに当たって、法人営業とは何かということをおさらいします。

 

法人営業とは、法人に営業をすることですが、担当者は個人ではなく、会社の窓口として、営業マンと商談をします。

 

個人向けの営業と違う点は、

 

1:支払いは会社の予算である

 

2:投資効果を求められる

 

3:意思決定プロセスが複数人になる

 

4:契約に関わるリスクを気にする

 

5:納得できるデータを必要とされる

 

6:万が一の保証やサポートが重要になる

 

という点となります。

 

 

 

カリスマ営業マンのスタイル

当たり前のことを言っているようですが、法人営業の特徴が商談の流れにも大きく影響します。

 

こちらの動画をご覧ください。

 

日本一のセールスマンと呼ばれる人のプレゼンテーションです。

 

 

営業の流れは、

 

バッチリ笑顔で、

 

商品の魅力を伝える

 

お客さんにとってどんなメリットがあるのかを伝える

 

利用シーンを伝える

 

手にした時のワクワク感を伝える

 

細部によるこだわりを伝える

 

キーワードを連呼する

 

セットでお得

 

希少性・限定性

 

クロージング

 

となっています。

 

見事ですね。

 

電話をする人が続出するのもわかります。

 

 

 

では、ここで考えたいのが、案内している商品の値段が10倍だったとします。さすがに、奥さんの一存では決められず、旦那さんに相談する場合、どうなるかということです。

 

想定するに、ご主人の反応は、

 

・高いな

・値段ほどの価値はあるのか?

・今のものはまだ使えるだろ

・この前エアコンが壊れただろう

・騙されていないのか?

・もっと安いところがあるだろう

 

などなど。

 

ご主人が、このような反応をする理由は、

 

・高田社長のプレゼンを聞いていないので、商品の魅力が伝わっていない

・妻の趣味にお金を使われるのを好まない

・かつて無駄にした買い物がある

・自分は今の炊飯器に不満を感じていない

 

という具合です。

 

法人営業で、「いい感じ」の商談が進まない理由はここにあります。

 

 

 

法人営業と個人営業の違い

ここからは、カリスマ営業マンのスタイルを法人営業に当てはめて考えてみます。

 

個人向けの営業で大切なことは、

 

1:第一印象

見た目が7割と言われます。

 

2:アイスブレーク

話しやすい雰囲気を作ります。

 

3:ラポール

相手との共通点を探します。

 

4:ベネフィット

特徴でなく、お客さんのメリットを伝える

 

5:応酬話法

「確かにそうですね。しかし・・・」

 

6:特典オファー

「今回は、・・・をおつけします。金利手数料当社負担です。」

 

7:クロージング

「限定10個となっています。今から2時間以内にお申込みください。」

 

だと言われます。

 

これが、法人営業だとどうなるでしょうか?

商談相手はこの人だとして、

 

 

ジャパネットたかたさんのバイヤーさんです(面識がありません)

 

彼の目的は、売れる商品を安く仕入れることが目的だとして、以下は筆者の想定です(ご本人の考えではありません)

 

 

1:第一印象

「商品力があれば気にしない。よほどのことがないと問題はない。その人よりも会社の信頼性が大切。この笑顔が白々しい。そんなに大きな声で話さなくてもいいのに・・・」

 

2:アイスブレーク

「時間がないので本題に入って欲しい。すでに次の商談が控えている。」

 

3:ラポール

「いいから、早く本題に入って欲しい。」

 

4:ベネフィット

「売れるかどうかはこちらで判断するので、機能をしっかり説明してほしい。これまでの実績を教えて欲しい。」

 

5:応酬話法

「売れる良い商品なら仕入れるし、良いと思わなければ何を言われても買わない。」

 

6:特典オファー

「言うまでもなく、こちらの言い値に合わせてくれるかどうかです。条件を言って欲しい。」

 

7:クロージング

「次回のミーティングで相談します。」

 

ということで、一般的に営業で言われているテクニックはほとんど通用しないと思われます。

 

 

 

商談相手の違い

法人営業と個人営業は、商談相手の性質が違います。だから、営業のスタイルも違うのです。

 

・商談相手の知識が豊富

・小型商談と大型商談の違い

・個人で決定できない

・欲しいからではなく、必要だから買う

・決済のために、社内プレゼンが必要となる

・他に優先するものがあれば後回しになる

・その場でクロージングができない

・付き合いが長期になる

 

つまり、個人営業で使われている営業法は、

 

・個人で決済できる金額であり、

・商品知識が豊富でない人が対象であり、

・売った後に営業マンとは関わらない

 

場合に有効なのです。この点を考えると、ジャパネットたかたが、シニア女性向けに絞ったセールスを行っていることは、素晴らしいターゲティングだと言えます。

 

しかし、

 

・個人で決済できない大型金額で

・商品知識が豊富なビジネスマン向けに

・長く関わる仕事をする

 

場合の法人営業は、購入へのモチベーションを上げても契約にはならないのです。

 

 

 

法人営業の11ステップ

ここからは、法人営業のステップを紹介します。

 

ステップ1:ヒアリングの許可を取る

法人営業の場合、いきなり商品を説明するのでなく、クライアントの問題をヒアリングしなければなりません。そのためには、ヒアリングをしてもよいという相手の許可を取り付けます。

 

方法はシンプルです。

 

「私は・・・のAです。

お時間をいただきありがとうございます。

・・・・の商談をさせていただきますが、

その前にいくつかご質問をしてもいいですか?」

 

という具合です。

 

 

ステップ2:状況のヒアリング

ヒアリングの許可を取れたら、クライアントの状況を確認します。

 

「今どんな製品やサービスを使っていますか?」

「どれくらいの頻度で使われていますか?」

「どのくらいの期間ですか?」

 

状況のヒアリングでわかることは、商談がどれくらいのサイズになるかということです。

 

 

ステップ3:問題のヒアリング

状況がわかれば、クライアントがどのような問題を認識しているのかをヒアリングします。

 

「今の製品に満足していますか?」

「不満はありませんか?」

 

という質問をします。しかし、うかつに問題を話すと、売り込まれることが予想できるので、簡単には話をしないクライアントも少なくありません。

その場合は、

「もっとこうなればいいという点はありませんか?」

とプラスの質問を投げます。

 

 

ステップ4:解決への意欲のヒアリング

問題がわかるとすぐに提案にかかる営業マンが多いですが、これが失敗の元です。

クライアントがどの程度、問題を解決しようとする意思を持っているかどうかで、契約率が違ってきます。

 

契約に至らない営業マンの多くは、ここで提案をしてしまい、「いいですね」という返答を前向きだと捉えてしまうのです。

 

「いいと思うけど、必要ない。」

という返答の方が圧倒的に多いのです。

 

ここでのヒアリングは、

 

「その問題は、どの程度緊急に解決しないといけない問題ですか?」

 

となります。

 

緊急であれば契約確率が高く、緊急性が低ければ契約確率も低くなります。

 

緊急性のない場合は、ステップ3の問題のヒアリングに戻ります。

 

 

ステップ5:解決策(利益)の提案

ここで製品やサービスを使った解決策の提案をします。この時に大切なことは、商品のスペックや特徴ではなく、相手が手にするメリットです。

 

×「世界最新の技術です。」

○「スピードが・・・なので、・・・%の効率アップとなります。」

 

法人営業の場合、数値で示すことは大切です。

 

 

ステップ6:コスト算出

商品やサービスのベネフィットを話すほど、クライアントは価格への転嫁を気にします。また、最終的に予算が合わなかったということにならないように、凡そのコストを算出し、価格感度を確かめておきます。

 

 

ステップ7:満足度の確認

本人が意思決定をできない以上、商談をすすめるためには、社内の決裁者に話を通してもらわなければなりません。そのためには、商談相手がプレゼン側に回ります。このハードルが高いために、ほとんどの法人営業の商談は成立しません。

 

あなたが一生懸命に作成した資料は、担当者のデスクに置きっ放しということも珍しくありません。

 

商談相手が行動するかどうかは、実際に動いてもらうことで、確認をすることができます。

 

・工場見学

・テスト使用

・見本の提供

・上長との面談

 

など、相手が行動をする提案をします。

 

 

ステップ8:最終意思決定者の特定

どのような手順で、誰がいつまでに決済をするのかを確認します。

 

 

ステップ9:社内プレゼンへの情報提供

決済をとるに当たって、必要な資料や情報がないかどうかを確認します。ここで、契約はクライアントにかかっているというプレッシャーを与えます。

 

 

ステップ10:結果確認

期日は来たら、結果の確認をします。万が一、ダメだった場合は、決済のプロセスをヒアリングして、リカバーが可能かどうかを検討します。難しい場合は、ステップ3に戻ります。

 

 

ステップ11:契約

口頭での発注で済ませる場合もありますが、できるだけ契約書を作成して、取引条件などもきちんと交渉をしましょう。

 

営業マンが下手に出ると支払い条件、支払いサイトなど、不利な条件を飲んでしまうことになります。

 

 

参考文献

 

 

法人営業のコツ

ここからは法人営業のコツについてお話をします。

 

1:契約までにステップがある

意思決定が個人ではできない場合、その場でクロージングに持込むことはできません。初回での契約を目指すのではなく、あらかじめ決めたステップを進んで行くようにします。

 

 

2:次のステップを明確にする

11のステップをすすめていくにあたり、商談の終わりには、必ず次のアポイントを取るようにします。

 

 

3:すぐに本題に入る

ビジネスの担当者は忙しいので、できるだけ速やかに商談に入ります。

 

 

4:トークでなく質問を重視する

法人営業の場合、トークよりもヒアリングが重要です。

ヒアリングには、

「状況を聞く」

「問題・課題を聞く」

「問題解決の緊急性」

を聞く3つがあります。

 

 

5:クライアントに問題を解決させる

あくまで問題の解決はクライアントが行い、営業マンはサポート役に徹します。

 

 

6:クライアントを動かす

工場見学、サンプル使用など、契約までにクライアントにも動いてもらいます。クライアントが動くほど契約率が高まります。

 

 

7:データを準備する

法人営業の場合、フィーリングよりもデータを重視します。資料は準備をすること。

 

 

8:クライアントが得られる利益を語る

法人営業の場合、欲しいから買うということではなく、会社の利益が購入の動機になるので、常にクライアントの利益を語ってください。

 

 

9:クロージングは一度でいい

世の中には、様々なクロージング法がありますが、それらの多くは個人向けの営業の合わせたものです。法人営業では、クロージングは1回。

 

「社内決済にかけていただけますか?」

 

ということでいいのです。

 

 

 

まとめ

この記事では、法人営業と個人営業の違いと、法人営業のステップをご紹介して来ました。法人営業には、個人営業とは違ったコツが必要となります。

 

法人営業に流暢なセールストークは必要ありません。大切なのは3つのヒアリングと提案力です。

 

もし、法人営業で結果が出ていないとしたら、どこかのステップでつまづいています。この記事のステップを見直し、法人営業で大きな成果をあげてください。

 

 

 

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この記事の執筆者

別所諒
・社長の味方コンサルタント
・株式会社経営戦略パートナーズ代表取締役
・心理カウンセラー

著書
「普通のサラリーマンが年収1000万円になる方法」

「がんばっても成果は出ない」

中小企業の2代目社長のサポーターとして、経営、マーケティング、組織開発の相談に乗っている。

 

 

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