売上がなければ会社は速攻で倒産します。売るためには、営業力が大切です。
だから、私は営業という仕事は、世の中で最も賞賛されるべき仕事だと思っています。
その大事な仕事を営業マンに任せていたら、会社はバカになります。
いつまで営業マンに営業を任せますか?
社内にマーケティング発想が根付かず、営業マンが使って販売をしている会社は少なくありません。特に、中小の製造業は、営業とはいえ、御用聞きと受注手配をしているだけの仕事に終始しています。ほとんどの営業マンは受注作業はしていますが、売上を作る営業をしていません。
この状態を続けていると、会社の成長が止まります。
これからの中小企業は、全社で営業の取組む必要があります。
目次
営業マンだけに営業を任せてはいけない理由
売れる営業マンが仕事を取ってくるので安心。
ひと昔前は、それでよかったかもしれません。しかし、インターネットの発達により、マーケティングの方法がどんどん進化している時代においては、営業マンだけの営業を任せると危険な状態に陥るかもしれません。
最初に、営業マンだけに営業を任せてはいけない理由をお話しします。
1:優秀な営業マンが採用できない
ニューエコノミーとオールドエコノミーに分断されている環境では、オールドエコノミー業種は人材の採用が難しくなっています。そんな中で、過去に採用して活躍してくれている営業マンと同レベルの人材を採用することは難しくなっています。今後、採用する営業マンは、レベルが下がります。
重要な客先をベテランが担当している限り、能力の低い新人が新規開拓をすることになります。当然ながら、売上アップを見込むことはできません。
2:個人差が生まれる
営業マンの教育制度がない場合、「見て覚えろ」というOJTでの指導となります。体系立てた研修を行ってない場合、営業成績にセンスとモチベーションという個人差が生まれます。売れる営業マンに偏りが生まれます。
3:見込み客の名刺が埋没する
力のない新人に新規開拓をさせている場合、根性でアポイントを取っても、受注にまで至りません。繰り返し、訪問することなく、せっかくの見込み客の名刺は営業マンに名刺ホルダーに仕舞われたままです。会社として、見込み客のフォロー体制がなく、受注しなければ顧客をデータ化しない場合、見込み客データは活用ができないまま闇に葬られます。
4:売れる営業マンが偉そうになる
売れる営業マンと売れない営業マンに差が出てくると、売れる営業マンは増長します。上司や他部署にも横柄な態度を取るようになり、社内の雰囲気が乱れます。
5:社内が混乱する
特別な品質力がない企業では、営業マンは融通を効くことで仕事を受注しています。特に、大口顧客には、交渉をせず、要求は全てYESで応えます。結果、飛び込みの仕事や短納期の仕事が増えて、社内の生産体制が狂います。
6:価格が下がる
付加価値を提供しない限り、価格を上げることができません。新規の競合が価格を下げて提案してきた場合、対抗措置として値下げをします。このように受注しても、利益が減るサイクルになります。
7:経営者の脅威となる
売れる営業マンが、「自分がいなければ会社が回らない」と考え始めると、態度が横柄になるだけでなく、給料などの待遇を要求し始めます。実際、売れる営業マンに転職をされてしまえば、お客を持っていかれる可能性もあり、経営者としては、厳しい話ができない状態になってしまいます。特定の社員に依存することは、経営の大いなる脅威となります。
全社営業をしないと社内から創造性がなくなる
営業マンに営業を任せている会社では、スタッフ部門は、手配と製造するだけになります。こうした場合、社内に作業をするだけの人材が増えます。
基本的に言われたことしかしないので、経験が活きません。
また定期的に若手社員を採用していない企業の場合、ベテランが作業をします。価格が下がっているので、人件費がコストアップにつながり、会社の利益を圧迫します。
また、次の理由で社内の雰囲気が乱れます。
1:営業マンと製造の仲が悪くなる
営業が優位になると、納期対応など、無理な仕事は入るようになります。営業マンの主張が優先されるので、製造部門は営業の指示に従わざるを得ません。ミスが出れば非難され、評価されるのは営業になるので、製造部門の不満は大きくなります。
2:スタッフ部門のベテラン社員に威厳が損なわれる
営業部のベテランが製造部門に横柄な対応をすると、営業の部下も同じような態度になります。結果、スタッフ部門のベテラン社員にも横柄な対応をするようになります。スタッフ部門の社員の威厳が損なわれます。
3:スタッフ部門の若手がやる気をなくす
ベテラン社員の威厳がなくなれば、スタッフ部門の若手社員は、もっと大変な状態になります。営業マンの手下のように、仕事を押し付けられます。ベテラン社員も反論ができないので、若手社員にしわ寄せが行き、やる気をなくします。
4:同じ仕事を何年も繰り返す
社員が忙しいと思い始めると、作業に終始します。実は、作業をこなしていると、仕事をしているように見えるし、頭を使わなくていいので、社員にとって都合がよくもあります。結果、何年も同じ仕事を繰り返します。その間に、年齢だけを重ねるので、経験による価値を生み出せません。
5:社内から創造性がなくなる
作業をすることに慣れた社員は発想力がなくなります。そうして、社内にはルーチンワークだけをする社員しかいなくなります。新しいことは社長が考えないといけなくなるのです。
全社営業とは何か?
では、全社営業とは何か?について考えてみます。
その際には、営業とは何か?という意識を変えることが必要です。
一般的に、営業とは「売ること」だと思われます。この考えの会社では売る仕事は営業マンの仕事であり、他の部門は営業に関心を持ちません。それでは、お客さんの顔が見えず、作業するだけになってしまいます。
営業とは、「お客さんを今よりも良い状態に導くこと」です。お客さんを良い状態に導くことで、製品やサービスを購入してもらえます。結果、売上が上がるのです。
全社営業とは、会社全体が「お客さんを良い状態に導くこと」を考えるということです。
ドラッカーは「マーケティングとはセールスを不要にすること」だと言っています。この言葉を意訳すると、「売りに行かずとも買い来てもらう」ことだと言えます。
全社営業とは、ドラッカーの言うマーケティングを実践することでもあります。
全員が営業意識を持つ
全社営業をするためには、社員の意識改革が大切です。どのような意識改革をすればいいのかは次の3つとなります。
意識1:どうしたらお客さんを良い状態に導けるのかを考える習慣
仕事の目的は「お客さんを良い状態に導くこと」という意識を統一します。判断基準は、それはお客さんを良い方向に導くことができるか?とします。
意識2:商品やサービスを考える習慣
強い自社製品やオリジナルサービスがあれば、お客さんに利用していただきやすくなります。日々の仕事はどうすれば、商品やサービスとして価値が上がるのかを考える習慣を定着させます。
意識3:無駄なコストはかかっていないか
強い商品やサービスは、価値のあるものを低価格で提供することです。これは安売りとは違います。削減できるコストを徹底的に削減し、重要なポイントに投資をするということです。
全社営業のセンターピンは社長が示す
全社営業を社内に定着させるためには、自分たちは「何を売っている会社なのか?」という意識を統一することです。
例えば、印刷会社は印刷を打っているのではありません。印刷物によって、クライアントとその先のコミュニケーションのサポートしているのです。
リラクゼーションサロンはマッサージをする場所ではありません。お客さんのストレスを和らげ、リラックスする時間を提供する場所なのです。
こうした意識を改革することで、顧客対応力が上がります。
こうした意識改革を全社戦略とも言います。全社戦略の下に、事業戦略を構築すると戦略がブレません。
「何を売っている会社なのか?」というセンターピンは社長が示してください。
全社営業を導入する手順
ここからは全社営業を導入する手順をお話しします。
ステップ1:全社営業をするという宣言
「何を売る会社なのか?」「そのために全社で取り組む」という宣言を社長が行います。
ステップ2:営業とは買いにきてもらうことだという意識づけ
営業が売りに行かなくても買いに来てもらえる商品やサービスを考える意識付けをします。
ステップ3:中心人物を決める
全体のリーダーを一人選出します。営業関連以外の役員が望ましいです。
ステップ4:営業推進委員会を立ち上げる
各部署で全社営業の担当者を決めます。担当役員を中心に定期的にミーティングをします。
ステップ5:研修の実施
マーケティングは、知識が必要なので、外部の講師を呼んで研修を実施します。コンサルタントを採用してもいいでしょう。
ステップ6:部署でのミーティング
各部署で「お客さんを良い方向に導くアイデア会議」を実施します。
ステップ7:営業推進委員会で報告
各部署からのアイデアは営業推進委員会で報告し、実施します。
ステップ8:フィードバック
どのような成果が上がったのか、各部署にまでフィードバックを行います。
ステップ9:評価
成果が上がれば、報酬として評価します。
まとめ
この記事では、全社営業について考えてきました。「売ることは営業の仕事です。私たちには関係がありません。」と言う社員が増えるほどに品質やサービスが低下していると考えて間違いありません。
営業を営業マンに任せずに、全社で取り組むことによって、お客さんを良い方向に導く会社になることができます。ぜひ、全社営業を取り入れてください。