「社長が会社にいなくても自動的に回る仕組み」
このように経営を自動化したい社長は少なくありません。また、仕組み化のコンサルタントも多数おり、自動化を推奨しています。
当社でも、経営を仕組み化することを推奨しています。経営を仕組み化しなければ、いつまでの社長の苦労は絶えません。逆に言えば、経営を仕組み化して、安定した収益を上げることができれば、社長の精神状態は安定します。新規事業にも取り組むことができます。
しかし、経営を仕組み化するためには、コツがあります。
この記事では、経営を仕組み化するコツを考えます。
目次
何のために仕組み化をしたいのか?
仕組み化を望む場合、何のために仕組み化をしたいのか?という目的を明確にすることが大切です。
あなたは、何のために経営を仕組み化したいと思うのでしょう?
A:安定した収益を確保したい
B:会社を大きく成長させたい
C:できるだけ経営に携わらず、悠々自適に暮らしたい
どれが正解というのはありません。自分の心に正直になればいいのです。なぜなら、それぞれの目的によって仕組みの作り方が違ってくるからです。
安定した収益を確保するための仕組み化
安定した収益を確保するために必要なことは、
・注文を取る仕組み
・ロスを出さずに生産する(サービスを提供する)仕組み
ということです。つまり、売ることと作ることを仕組み化すればいいことになります。
注文を取る仕組みとは、
・顧客と年間契約を結ぶ
・広告からの集客とコンバージョン(注文数)の計測
・既存客への注文聞き取りのルーチン化
・新規営業活動の継続化
などとなります。
ロスを出さずに生産する(サービスを提供する)仕組みとは、
・仕入れコストの平準化
・生産数の計測
・ロスを減らすルール化
などとなります。
たいていの会社の場合、生産は仕組み化ができています。設備を投資すれば、生産量が上がることもわかっているはずです。問題は、注文を取る仕組みがないことです。安定した収益を確保するためには、営業を仕組み化すればいいことになります。
会社を大きく成長させるための仕組み化
安定した収益を確保するためには、営業と生産を仕組み化すればいいのですが、時代は変化しています。さらに強力な営業体制や生産力のある企業が出てくると、コスト競争になります。この状態では、これまでの生産の仕組みでは、太刀打ちできません。
会社を成長させるためには、仕組みをグレードアップする仕組みが必要となります。
営業体制を強化する仕組み
生産量を上げてコストを下げる仕組み
新規事業を構築する仕組み
です。
この仕組みは、営業と生産を仕組み化するよりもワンランク上となります。
仕組み化する方法は3つとなります。
・社長が定期的に考える時間を作って、定期的に指示を出す(自分の時間確保の仕組み化です)
・担当者を決めて、定期的に施策と実行を報告させる
・委員会を設置して、定期的に施策と実行を報告させる
この仕組みは、ルーチン業務外となりますので、少し高度になります。特に、社長の指示を受けることに慣れた社員が多い会社で仕組み化するのは、人材育成と平行する必要があります。
社長が経営から離れるための仕組み化
この場合の仕組み化は、社長がいなくても回る仕組みを作ることなので、最終的に、オーナーとなり、他人に経営を任せるということになります。
その際のゴールは、
・社長が不在でも日常業務が回る体制づくり
・業務を売却できる状態づくり
となります。この場合の仕組み化とは、社長が仕組みを作るというよりも、仕組み化できる人材育成が鍵となります。
仕組み作りが必要な3つの理由と最も大切なこと
なぜ、経営に仕組みが必要なのでしょうか?その理由は、次の3つになります。
1:人のパフォーマンスに波がある
2:人はやめるし、サボる
3:人は間違った判断をする
ということです。
逆に言えば、パフォーマンスに波がなく、サボらず、常に正しい判断をすることが仕組み化の本質であるなら、人よりも人工知能やロボットに任せる方が賢明です。実際、人の代わりになるロボットがあると、仕組み化がやりやすくなります。
実は、この点がとても大切で、仕組み化とは、人間であることをできるだけ考慮せず、機械装置として仕事を動かす方法論だということです。
つまり、
仕組み化とは、安定した仕事をずっと継続することであり、結果的に誰がやっても同じ生産性を確保できるということになります。
どこを仕組み化すればいいのか
仕組み化に着手する際は、業務フローを「見える化」します。
どこの仕組みが滞っているのかをチェックして、安定性を確保します。その際、お金を生む装置には人とコストをかける、お金を生まない装置は少人数での効率化を目指すことがセオリーです。
そうなると、受注に困らない会社の場合は、生産機能を仕組み化し、売上アップを目指すなら、営業活動を仕組み化することになります。
感情を挟まずに仕事を進めることが仕組み化です。
仕組み化を機能させるポイント
ここまでのお話をお聞きいただくと、仕組み化は機械化する方がいいのではないかとお考えかもしれません。実際、その通りです。機械はサボらず、確実性があります。課題は、機械に作業を覚えさせるという点だけです。
近い将来、機械に仕事を奪われると言われますが、それは現実になります。
とは言え、機械もメンテナンスが必要です。実は、人をシステム化する仕組みも同じように、メンテナンス要員が必要になります。
機械と人の違いは、自動化できないと言うことです。人は自分の意識で動きますが、意思で止まることもあります。だから、人の仕組みを動かすためには、仕組を動かす人材と仕組みとして動く人材に分ける必要があるのです。
仕組み化のエネルギーは評価
社長が末端の社員に仕事ぶりに一喜一憂しているようでは、仕組み化はできません。社長は仕組を管理する幹部社員を管理することを仕組みにすればいいのです。
具体的には、社長が得たい結果を伝えて、進捗を社長が知りたいタイミングで報告させるというルールを徹底するということです。
仕組み化が難しいのは、装置が人であるということです。機械のように電気エネルギーとメンテナンスで動かないのが難点です。人を動かすためのエネルギーは「評価」です。具体的には、権限と報酬となります。だから、仕組を動かす側の幹部と仕組みとして動く社員は、区分しておく必要があります。幹部になれば手厚い報酬があると、優秀な社員ほど幹部を目指すという仕組み化にもなります。
注意点は、幹部社員には、事前に社長の得たい結果を達成するというコミットさせてください。「忙しいからできない」「○○の理由でできなかった」という言訳を事前に封印しておくということです。目標を明確にし、結果で評価を決めるということも仕組み化なのです。
仕組み化をしたいなら、幹部社員を絶対に否定しない
仕組み化とは、人を装置として動かすことだとお話ししました。機械は間違った使い方をすると誤作動を起こします。人間も同じように、扱いを間違うと誤作動を起こします。誤作動だけでなく、反抗をするのが人間の厄介なところです。
人に誤作動を起こさせないためには、社長が幹部社員を否定しないことです。
例えば、部長が部下を叱っている時に、厳しく言い過ぎだと思っても、部長はそのやり方が部下という装置を動かす最善策だと思っているのです。そこに、社長が入って、「まぁまぁ、そんなに厳しい言い方をしなくても」とやると、社長は部下の味方になり、部長が孤立してしまいます。その結果、装置である部下は社長の方を向き、部長の言う通りに動かなくなります。
そんなことをしてしまうと、いつまでの社長が仕組を動かさなければならなくなります。装置の管理を幹部に任せたら、部下の前では、幹部を100パーセント肯定してください。
だから、部下には、「部長の言い方は厳しいかもしれないが、それだけ大切なことだと言うことを理解しなさい。」などと部長を肯定します。肯定されることで、部長は装置を動かす権限を委譲されたと思い、自分ごととして仕事をするようになります。
もし、やり方が違う場合は、部下のいないところで、「いつもよくやっているね。部下の然り方だけど、ソフトな言い方の方が効果的かもしれないね。」とアドバイスをして、後は任せてください。
仕組みの装置は正しく使ってください。
まとめ
この記事では、中小企業が経営を仕組み化する方法をお伝えしてきました。仕組みとは、感情を排除し、人を装置として動かすことで成立します。非人間的な話をしているようですが、人が人であることが仕組み化を妨げる要因なのです。
経営の仕組み化とは、クールな視点が必要になります。このクールな視点を身につけることができれば、安定した会社経営をすることができると私は考えています。