社員のモチベーションをどのように上げればいいのか?
経営者なら誰でも悩みます。
この時に間違えやすいのが、
「モチベーション=やる気」
という考え方です。
合わせて、
「やる気=仕事ができる」
と考えるのは二重の間違いとなります。
仕事ができるというのは、スキルの問題なので、やる気と連動しますが、結果が伴うかどうかはわかりません。
世界一走ることにやる気のある人が、世界一速く走ることができるわけではありませんね。
こうした間違いをしてしまうのが、社長本人のスキルが高くやる気があるからです。社長ほどスキルがない社員に過度な期待は禁物です。また、社員は社長ほど会社についての責任を持っていません。同じモチベーションを持たせることはとても困難です。
「やる気があるのか?」と怒っても、「社長ほどやる気はありません。」「僕なりのやる気は見せています。」という返答に、返す言葉をなくしてしまいます。
では、どうすればいいのか?という話になりますね。
ここで使えるのが脳の仕組みを活用して、社員のモチベーションを上げる方法です。この記事では、脳の仕組みを活用して社員のモチベーションを上げる方法について考えてみます。
目次
「やる気=能力」ではない
最初にお断りしておくと、「やる気があればなんでもできる」というのはウソです。
なんでもできるスキルのある人はやる気になれば、なんでもできるということです。しかも、その人は自分のやれることがわかっているので、できないことには最初からやりません。
つまり、普通の人よりもスキルの高い人が、すごいことをして、その結果として、「あなたにもできる」というエールを送っているだけなので、自分のモチベーションを高めるにはいいですが、人に強要すると期待通りには行きません。
スキルを上げるためには、訓練が必要です。仕事でも同じです。目標を持ち、達成していくことでスキルは上がります。この目標を設定し、実現するための行動の原動力になるのがモチベーションです。
社員に成果を出してもらうスキルを身につけてもらうには、然るべき訓練を必要とします。
もちろん訓練をしたからと言って、誰もが一流になるとは限りませんが、上達することは間違いありません。かつ、訓練をしようというモチベーションがなくては話になりません。
では、訓練を継続するモチベーションを上げる方法についてお話しします。
脳はモチベーションを上げる邪魔をする
脳を活用したモチベーションアップの方法を考えるに当たって、脳の目的について知っておく必要があります。
前提として、脳は気まぐれで、私たちの意思とは別の行動を取らせることがあるということです。
私たちの脳は、生きていくのに必要最小限の行動をするようにプログラムされています。そして、そのプログラムは常に省エネをしています。人間の脳は、生命を維持していくうえで最適な働きをするためにプログラムされているとも言えます。
こうした脳の目的は、あらゆる動物に共通しています。
長く生きようと思えば、
・できるだけ力を使わない
・危険なことをしない
・体に負荷をかけない
子孫を残すためには、
・体力を蓄える
・SEXをする
ということになります。
ですから、
・食べる
・寝る
・SEXする
ということにはモチベーションは必要ありません。どんな動物にも共通した行動ですね。
このシステムがあるため、私たちは、モチベーションに関係なく、毎日食事をするという習慣を身につけています。
それに対して、「スキルを上げる」という行動を脳は、行きていくために必要な活動だと認識しません。
中小企業の社長は、会社の存続が命に関わるのでモチベーションが高いですが、社員は生活ができる給料があれば行きていくことができるので、社長と社員にモチベーションの差があるのは当たり前なのです。
モチベーションを上げる脳の仕組みについて
脳を活用して、モチベーションを上げるために、脳の構造についてお話をします。脳の全体図は複雑ですが、ここではモチベーションに関連した仕組みのみをお伝えします。
私たちが何かの行動をするためには、「情報」が必要です。仕事をするにしても、どんな仕事をするのかという情報がなければ動くことができません。
モチベーションが上がる仕組みは、何らかの情報からスタートします。
1:情報
↓
2:重要なこととしてインプット
↓
3:目的・目標設定
↓
4:最適な方法を選択
↓
5:行動する
↓
6:達成
↓
7:新しい目標
となります。
脳のメカニズムを紹介しますと、情報を記憶する中枢は、海馬になります。「見たこと、聞いたこと、経験したこと」の記憶は、まず海馬に仮登録されます。
海馬の隣に扁桃体があります。扁桃体は、私たちの喜怒哀楽といった感情に関係しています。扁桃体が興奮すると海馬の動きも活性化されやすいのです。
海馬に重要な情報として記憶され、喜怒哀楽を伴って、重要事項だと脳が判断した情報は、目的や目標につながります。
目標達成のための情報を検索して、取り出すときの司令塔となるのが、前頭葉の一部、前頭前野です。
前頭前野は、脳の司令塔であり、思考、判断、創造、計画、遂行実行機能、意欲、理性を司っています。
つまり、
海馬→扁桃体→前頭前野
の順で、モチベーションが上がると考えることができます。
扁桃体は、海馬だけでなく、前頭前野とも密接に関係しています。
前頭葉は、思考や判断といった情報処理分野で重要な役割をしています。
たとえば、上司が怒り狂うと、部下は扁桃体が働いて恐怖を感じます。しかし、その上司が本当はやさしく、自分のことを考えて言ってくれると前頭葉が判断すれば、恐怖は信頼に変わります。
この点がスポーツの世界でパワハラもどきの指導が横行する理由です。しかし、一般的な社員は、そんなに厳しい指導を受けた経験がないし、必要もないので、恫喝すると萎縮するか反撃に出てきます。
パワハラは脳の機能から分析すると、部下が上司に恐怖を感じて、不安状態に陥ると、脳のネットワークの働きが機能低下している状態です。扁桃体が正常に機能しなくなり、感動が失われるために、その隣の海馬の記憶機能も低下してしまい、仕事の質が下がるというサイクルになっていると考えられます。
モチベーションを加速する脳内物質
脳の各部位の間には隙間があり、シナプスという神経ネットワークがあり、脳内物質が伝達されています。
どのような脳内物質が伝達されるのかで、モチベーションに大きな影響を与えます。
脳内には、多くの脳内物質がありますが、ここではモチベーションに関連している3つの脳内物質についてお話をします。
1:ドーパミン:幸福を感じる
2:ノルアドレナリン:不快を避ける
3:セロトニン:落ち着き、ドーパミンとノルアドレナリンを調整
脳内物質で重要なのはバランスです。
タバコやお酒にドーパミンが出ている状態が極端になると、依存症になります。不快を避けるノルアドレナリンが多くなると、ストレスが大きくなります。セロトニンが多くなりすぎると無気力になります。
脳を活用してモチベーションを上げる方法は、
1:海馬に記憶させる
2:扁桃体を刺激する
3:前頭前野を活動させる
そして、
ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンをバランスよく脳内に伝達するということになります。
それでも脳は邪魔をする
脳の仕組みがわかったところで、厄介なのは、理解した通りに脳が動いてくれないということです。
脳はそれぞれの段階を邪魔しようとします。
1:情報(海馬)
人は生きていく上で必要な情報か、自分の興味のあることにしか関心を示しません。脳が仕事は重要でないと判断している社員は、最低限の勉強しかしないのはこのためです。
2:重要なこととしてインプット(海馬)
情報が脳に入っても、重要なことと判断しない限りは、脳に蓄積されません。教えたことを忘れて、何度も同じことを言わせる社員は、脳に障害がない限り、重要な情報だと脳波認識していないと考えられます。
3:目的・目標設定(扁桃体)
給料が下がらなければいいと考えている社員が仕事をする目的は、毎月給料をもらうということです。現状維持が目標になっている場合、負荷のかかることは全て拒みます。「やっても無駄」というのは、仕事に喜怒哀楽がなく、扁桃体が機能していないと言えます。
4:最適な方法を選択(前頭前野)
情報は少ないので、最適解を選ぶための選択肢も少なくなります。何度も同じ失敗をする社員は、ばかなのではなく、選択肢がないのです。
5:行動する(前頭葉)
思考したり、体を動かすにはエネルギーが必要です。脳はエネルギーの消費を最小限にするプログラムがなされているので、言ったことしかしないというのは当然の原理です。
6:達成(ドーパミン)
今の生活を維持するためには、目的と目標はすでに達成をしているので、達成感は得られません。
7:新しい目標を設定
現状維持が目的なので、身の危険がない限り、新しい目標も設定されません。
ここまでの話で、モチベーションを意思の力に求めるのは無駄だということがおわかりでしょう。
モチベーションの高い人は、何らかのきっかけで高くなり、モチベーションの低い人は、きっかけという情報をインプットしないので、低いままだということです。
とは言え、ここで諦めてしまっては経営ができないので、脳を騙す施策が必要になります。
ステップ1:海馬に記憶させて、扁桃体を刺激する
第一段階として、仕事を脳にとって重要な情報だと認識させる必要があります。
記憶の関所である海馬が重要だと判断する情報は、
1:何回も繰り返してインプットされる情報
英単語や歴史の年号を繰り返し口に出して覚えるイメージです。海馬は、何度も同じ情報が繰り返されてインプツトされると、「これは重要」と認識して、脳に刻み込むのです。
2:心の動きが記憶に大きく関係している情報
気持ちが大きく揺さぶられた情報は、自然に記銘されやすいのです。
「楽しかった旅行の思い出」、あるいは「思い出したくもない不愉快な事件」などは、忘れたくても忘れられません。感情の中枢である扁桃体が、海馬と共同作業をして、記銘力を強化しているのです。
3:五感に関する情報。
ひとつの感覚だけが刺激されるよりも、いくつかの感覚が連合的に刺激されて得た情報の方が、記銘されやすくなります。
たとえば、博物館で展示された作品をただ観るだけでなく、音声ガイドを耳から聴き、できるのなら触って感触を確かめたほうが、いつまでも覚えている経験になりやすいということです。
こうした海馬と扁桃体の特徴を仕事に活かしてモチベーションを上げるためには、帰属意識と会社精神を持たせることがポイントになります。
では海馬と扁桃体を刺激するモチベーションアップの仕組みについて考えます。
仕組み1:企業理念を朝礼で唱和する
心が伴わなくても繰り返し唱和をすることで、企業理念は記憶されます。毎朝唱和することで記憶が強まり、社員の価値観に大きな影響を与えます。心が共感していなくても構いません。大きな声で唱和を繰り返せば効果が出ます。
多くの会社で企業理念は浸透しないのは、意味を理解させようとするからです。繰り返すだけで効果があります。
仕組み2:企業理念を紙に印刷して社員に持たせる
リッツカールトン では、クレドと言われる行動指針を全社員が常に携帯し、朝礼で使用しているようです。声に出す、見る、耳で聞くという五感を刺激しているので、記憶に刻まれやすくなります。
リッツ・カールトンのクレドはこちら
http://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards
仕組み3:感動的なストーリーを共有する
ディズニーランドは、感動的なエピソードに事欠きません。こうしたエピソードを共有することで、愛社精神が育まれます。
感動を共有すると、次は自分で感動のサービスをしようというモチベーションが高まります。
ディズニーのサービスはこちら
https://buzzmag.jp/archives/2841
仕組み4:グッド&ニュー
グッド&ニューとは、米国の教育学者ピーター・クライン氏が提唱したもので、組織、チームを活性化するためのワークです。
3〜5名でグループになり、24時間以内に起こった「よかったこと」「新しいと感じたこと」を話します。自然とプラス思考になります。グッド&ニューをやる時は、クッシュボールをいうゴム製のボールを使います。話している人がボールを持ち、話し終えると次の人にボールを渡します。
グッド&ニューのやり方はこちら
https://shimojikiyotaka.jp/kushu-ball-brain/
仕組み5:強烈な体験の研修を実施する
管理者養成のための「地獄の訓練」などと呼ばれる研修があります。合宿で過酷な体験をすることで、「この経験があれば何でもできる」という記憶が刻み込まれます。賛否はある方法かもしれませんが、脳の構造を活用した方法として合理的です。
地獄の訓練の情報はこちら
仕組み6:社内レクリエーション
非日常的な体験は記憶に刻まれやすく、それが好意的なものであれば、提供してくれた会社への好意につながります。また、返報性の法則というお返しの原理が働くので、楽しい思いをさせてくれた会社のために仕事をするモチベーションが上がります。
具体的なイベントは、旅行や運動会などになりますが、もっと小規模のものでも構いません。
注意点としては、「楽しい」ということです。楽しいと感じなければ逆にモチベーションが下がるので注意が必要です。
具体的なレクリエーションの事例
ステップ2:前頭前野の機能を使う
前頭葉から運動野を除いた部分が前頭前野と言います。
前頭前野の機能は、思考、創造、コミュニケーション、意思の決定、情動の制御、行動の抑制、記憶のコントロール、意識・注意の集中、注意の分散となります。つまり、仕事に関わる多くは、前頭前野が機能しているのです。
前頭前野の働きは次の2つになります。
1:迅速に考える部分…… ワーキングメモリー
2:深く考える部分‥…熟考機能
例えば、見積書の計算やプレゼンテーションをしている時は、前頭前野のワーキングメモリが動き、今後の営業展開を考えている時は、塾考機能が動いています。前頭前野の特徴は、両方の活動を同時にできないということです。
例えば、サバンナでライオンに追われている時は、どのように逃げるのかで精一杯なので、ワーキングメモリーがフル稼働しています。木に登り、ライオンが手を出せない場所に避難できたら、どのように逃げるのか、やっつけるのかなどを考えます。ここで熟考機能が働き始めます。
前頭前野の特徴は組織作りに生かすことができます。
前線で仕事をする部隊と後方で作戦を考える部隊と分けるのです。
中小企業で行われているプレーイングマネージャー制度は、前頭前野の機能から考えて、合理的ではありません。
仕組み7:動く社員と考える社員を分ける
少しドライな言い方になりますが、組織をワーキングメモリー部隊と熟考機能に分けることが効果的です。
ワーキングメモリー部隊は、決まった時間に決まった仕事をするという具合にルールを徹底することが大切です。
動く社員
・動き方のルールを徹底する
・休憩時間を決める
・目標は数字で設定する
塾考機能社員
・目的を明確にする
・方法論から考えさせる
・目標は改善数値で設定する
トヨタ生産方式は、豊田喜一郎氏らが提唱していた考えを大野耐一氏らが体系化したものだと言われています。大野氏は、会社の熟考機能を担ったと考えられます。
トヨタ生産方式
https://ja.wikipedia.org/wiki/トヨタ生産方式
中小企業では、社長のみが塾考機能となり、役員以下は、指示をしないと動かないケースがほとんどです。人材を育成するためには、方法を指示せず、目的だけを伝えて実践させるということが大切です。
仕組み8: 熟考機能部隊が育つ仕組み
サイバーエージェントは、「人の成長=企業の成長」と位置付けており、熟考機能を担う社員が育つ仕組みをいくつも実施しています。
サーバーエージェントの社内制度
https://www.cyberagent.co.jp/way/culture/
目標や課題を与えて解決策を考える社員は熟考機能を使っていると言えます。最高レベルは、課題を発見し、自ら解決策を考え、実行する社員になります。こうした社員が育っている会社は、人が成長していると言えます。
仕組み9:退職前のファイナルブレスト
面白法人カヤックはユニークな社内制度で有名です。中でも、類を見ないのは、退職前のファイバルブレストです。退職を決めた社員と一緒に、どうしたら辞めずに済んだのかをブレストします。これは、そのブレストを通して「会社のここをこう変えた方がよかったのでは」という意見をもらうことにもなります。それを受け止めて、会社をよりよくしていこうという制度です。残る社員は、会社について考えるようになります。
https://www.kayac.com/company/institution
ここで注意したいのは、前頭前野を稼働させすぎると、脳が疲弊するということです。長時間労働は脳にとってもよくないと言えます。仕事には、脳を休めるために適度な休憩が必要だということです。
仕組み10:ユニークな休暇制度
仕事をしたら休みが必要です。しかも、その休みが特別なものであれば、効果の高くなります。
ユニークな休暇制度の事例はこちら
https://parallel-career.info/2017/02/10/nique-company-systems/
ステップ3:脳内物質の機能を使う
モチベーションに関連する脳内物質は、次の3つだと考えられます。
1:ドーパミン:幸福を感じる
2:ノルアドレナリン:不快を避ける
3:セロトニン:落ち着き、ドーパミンとノルアドレナリンを調整
ドーパミンは幸福を感じた時に分泌され、さらにドーパミンを出すために、幸福な行動を継続します。
ノルアドレナリンは、不快を避けるために、脳内物質を分泌するので、ぼんやりとしていた頭が冴え渡り、集中力が増します。そして、不快な対象と「闘う」べきか「逃げる」べきかの選択をします。
つまり、脳を活用したモチベーションを上げる方法は、
ドーパミン型モチベーション
→「楽しさ」「褒美」「ほめられる」などの報酬を求めるモチベーション
ノルアドレナリン型モチベーション
→「恐怖」や「不快」や「叱られること」を避けるためのモチベーション
になると考えることができます。
どちらかに極端に偏ることを防ぐために、セロトニンが分泌されます。セロトニンは脳をリラックスさせますが、リラックスしたままだと仕事ができないので、気分転換の役割だと考えればいいでしょう。
では、2つのモチベーションを上げる具体的な方法を紹介します。
ドーパミン型モチベーション
脳に報酬を与えると、ドーパミンが出てモチベーションが高まります。ドーパミン型モチベーションを継続する方法は、次のサイクルを繰り返すことです。
1:目標を設置する
2:コミットする
3:楽しみながら実行する
4:達成したら褒美を出す
5:次の目標を設定する
ドーパミン型モチベーションのポイントは、
・楽しみながらやれること
・ゲーム感覚取り入れる
・小さな目標を設定し、達成までのサイクルを短くする
・チーム目標を設定し、達成に向けて行動する
・ほめることでドーパミンが出る
自ら目標を設定させることがポイントで、達成した時にはほめます。
仕組み11:やらない仕事を決める
モチベーションが下がるのは、やりたくない仕事をやっている場合です。ウルシステムズ株式会社では、やらない仕事を共有することで、仕事の質を高めています。
「すごい仕事」が経営目標!? 売上目標をやめても、増収増益を続ける組織作りとは
仕組み12:メンターとメンティー制度
先輩と後輩をメンターとメンティと位置づけ、メンターとメンティーというコミュニケーション支援の仕組みがあります。
メンター制度とは
https://tunag.jp/ja/contents/hr-column/1770/
仕組み13:モチベーションが上がる評価制度
リンクアンドモチベーションでは、会社と社員のエンゲージメントを高めるために、ユニークな評価制度を取り入れています。
https://www.lmi.ne.jp/companydata/inhouse.html
仕組み14:ほめる制度
人は褒められると、ドーパミンが出ます。こうした脳の構造を活用する方法があります。
褒め言葉カード
リンクアンドモチベーションが提供している「ホメログ」というシステム。
褒める場合、「ありがとう」と言わない方が効果的です。業績に対して「ありがとう」と言うと、部下は社長や上司のためにやっているように感じます。
「おめでとう」「よくやった」などの言葉が適切です。
仕組み15:仕事切り上げ制度
ZOZOタウンを運営しているスタートトゥデイには「ろくじろう」という「6時間労働制」という取り組みです。チームでその日の目標を達成すれば、15時で仕事を終えてもいいという制度です。逆に仕事が終えられない場合は、チームで残業をするようです。
https://corp.zozo.com/recruit/welfare/
ノルアドレナリン型モチベーション
ノルアドレナリン型モチベーションは、不快な状態から抜け出そうとする脳の働きを活用するものです。プレッシャーやストレスからの回避を仕事につなげる方法です。
プレッシャーやストレスを与える方法は、
厳しい指導
会議では発言させる
時間を限定する
ダメな意見にダメだという
というような施策となります。
ノルアドレナリン型モチベーションの注意点は
・過度なストレスは精神疾患を招く恐れがある
・社員が攻撃的になることがある
・長期間の施策は逆効果
ブラック企業は、ノンアドレナリン型モチベーションを活用していると言えます。一定の成果は出ますが、「逃げる」という選択肢もあるので、退職者が増えることになります。
仕組み16:デットライン
すべての仕事にデットラインを設けて、プレッシャーを持ちながら仕事をする仕組みです。
吉越浩一郎氏のデットライン仕事術については
https://toyokeizai.net/articles/-/53882
仕組み17:「で、どうするの?」文化
仕事には、困難や失敗がつきものです。その時に、毎回上司の指示を仰いでいるようなら社員の成長はありません。リクルートでは、ミスをした時に、上司は「で、どうするの?」と部下に課題解決の思考を身につけさせる返答をしているようです。
https://toyokeizai.net/articles/-/86105
仕組み18:「オフィスダーツ」
カルビーは、システムにより、1日2回、強制的に席替えを行っています。デットラインとオフィスの整理に役立つと思われます。
https://www.office-hiroba.com/news/113/
セロトニン型モチベーション
ドーパミン型モチベーションとノルアドレナリン型モチベーションを継続させるために、セロトニン型モチベーションを取り入れると効果的です。
セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンの過剰な分泌を抑え、脳内物質のバランスをとる「調節物質」です。
仕事で言えば、気分転換になります。
定期的な気分転換の時間を取り入れることで、社員のモチベーションを維持することができます。
気分転嫁をしてモチベーションを維持する方法として、
仕組み19:フリーアドレス
固定のデスクを廃止して、オフィスをフリーアドレス制にすることで、部署や職位を超えたメンバーとも隣同士で仕事ができるので、毎日が新鮮です。コミュニケーションが活発になることによって創造性が大きく膨らみ、新しいアイディアが出やすい環境だと言えます。
仕組み20:カフェバウチャー制度
社外でも快適に仕事ができるように、カフェで仕事をした際のドリンク代を経費で精算できるのがカフェバウチャー制度です。「次の訪問先に行くまで、少し時間あるけどオフィスまで戻るのは時間がもったいない」「ちょっと集中して提案を考えたい」など、環境を変えることで効率を下げる後押しをしています。
物理的にセロトニンを出す方法は、朝陽をあびるということです。朝型の仕事をすることで自然にセロトニンが分泌されやすくなります。残業を減らし、早朝から仕事をする制度も有効だと考えられます。
ステップ4:さらに、モチベーションを継続させる脳の活用法
脳の特徴を活用して、モチベーションを継続させる方法をお伝えします。
1:ルーティーン
私たちは、何かに取り組もうと思う時、「やる気」を高めようと考えます。このように一般的には、「やる気→行動」だと考えられています。だから、多くの人はやる気が行動のスイッチだと考えています。
しかし、最近の脳科学の研究によると、この考えは逆だということがわかってきました。
つまり、「行動」を起こしたあとに「やる気」がわいてくるのです。機械と違って、人間は動き始めてからスイツチが入るのです。
大切なのは、物事を始める前に行動の「儀式」をつくって実行することです。
仕事にかかる前に、毎回同じ動作をすることで、スイッチが入ります。
こうした儀式は、スポーツの世界では、ルーティンと言われます。イチロー選手は、打席に入る前に毎回同じ動作をしています。彼は、こうした儀式をつつがなくとり行いながら、打席への集中力を高めているのでしょう。
仕組み21:本気の朝礼
居酒屋のてっぺんでは、開店前に「本気の朝礼」を行っています。お客様を迎える前に、スタッフ一人一人の本気を引き出し、スーパーハイテンションな状態、最高の状態を作っています。これも儀式のひとつです。
仕組み22:女子マネ
ドワンゴには、時間が不規則なエンジニアに、毎朝10時30分からジャージを着た女子マネとラジオ体操をすると、専用のスタンプカードにスタンプを1つもらえるという制度があります。このスタンプと引き換えに、カフェテリアで通常よりも少し豪華な弁当を、女子マネから手渡しで受け取れます。
(女子マネはアルバイト)
https://japan.cnet.com/article/35036490/
2:声に出す
前頭葉が重要な情報だと認識するのは、「新鮮な情報」だからです。
脳は新しい情報が大好きなのです。声として聴覚から入った言葉は、新鮮な情報として入力され、前頭葉にツイッチを入れます。「つぶやき」によって、前頭葉にスイッチが入ると、「自分が幸せになるためにはどう行動したらいいか」という目標の再認識が行われます。そして、運動情報をトップダウン(司令塔から命令をくだす)で、指令・実行します。
仕組み23:価値のある会議の運営
声に出して発言する機会があり、それが価値を生み出すきっかけになるのは会議です。最悪の会議は、上司が一方的に「報告」をする会議です。営業会議では、達成者のノウハウを共有するのでなく、未達成の人を問い詰めると、言い訳を語るしかありません。会議は参加者全員が発言をするように運営をしたいものです。
「会議を変えれば会社が変わる」生産性を1.5倍向上させたイノーバ式会議術」
http://www.mmm.co.jp/office/post_it/meetingsolution/casestudies/case_g.html#tp1
3:まねる
高等動物の前頭葉には、ミラーニューロンという「模倣」に関係している神経細胞があります。
このミラーニューロンは、他人の動作を観察するだけで、自分も同じ動作をしているかのように働きます。まるで鏡に映したように同じように脳が働くためミラーニューロンと呼ばれているのです。そして自ら同じ行動することで、他者に共感できるのも、ミラーニューロンの働きによると言えます。
そもそも成功している人たちは、先輩の、何らかの成功につながる模倣を実践できたからこそ、今日の地位を築いているわけです。
日本の伝統文化にも「守破離」という教えがあります。まずは型を覚えて、次に他の師や流派の教えについても考え、よいものを取り入れて、発展させます。最後は、特定の流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階を言います。
まさにミラーニューロンを活用した上達方法だと言えます。
仕組み24:誰がやっても同じものができる
トヨタの職場でとても大事にされているものが「標準」です。
標準とは、現時点で最善とされる作業のやり方や条件のことで、それらを踏まえたうえで「このやり方で作れば、必ずうまく作れる」という方法です。標準を守れば誰が作業しても同じ成果が得られます。マニュアルのさらに上の考えだと言えます。
https://toyokeizai.net/articles/-/130961
4:宣言
「売上目標●●円を達成します。」
「新規会員を●●人増やします。」
このように、何かの目標を達成したいときには、周囲に宣言すると実現しやすいという話を聞いたことがあると思います。これは、脳が不快を避けようとする特性を活かした、脳科学的にも理にかなった方法と言えます。大勢の人の前で公言すると、後には引けない状況ができます。
仕組み25:自分の働き方を宣言する
サイボウズでは「新・働き方宣言制度」という新たな人事制度が動き始めました。この制度はもはやフリースタイルです。社員それぞれがが「働きたい時間と場所を自由に」文章で宣言できるのだそうです。自由と責任をセットにした仕組みです。
https://cybozu.co.jp/sp/workstyle/workstyle22.html
仕組み26:ライバル指名制度
カヤックでは、ある社員が、他の社員を「ライバル」として指名し、半年後、全社員の投票によって2人の勝敗を決めます。この制度の目的は、「他人との競争を楽しむ」こと。勝った社員には賞金3万9千円(サンキュー)が授与されます。
5:褒美
甘いものを食べると「幸福感」を感じ、脳が快感を覚える傾向があります。また、心身をフルに活用したあとには、甘いものが食べたくなります。これは脳がブドウ糖を欲している、脳内エネルギーが不足しているというサインです。
そもそも私たちの脳は大の甘党です。脳の重量は約1・5キログラムにすぎませんが、脳のブドウ糖消費量は体全体の実に20%以上です。ブドウ糖は脳内エネルギーを補給するために欠かせない材料です。
仕組み27:ユニークな飲み会
Sansanでは、「他部署の社員と飲みに行く場合に、会社から1人当たり最大3,000円の補助が受けられる」という制度があります。「飲―みー(Know Me)」というネーミングも秀逸です。
https://jp.corp-sansan.com/blog/2017/07/know-me.html
仕組み28:働いてマイルが貯まる
オンデーズでは、社内通過を発行してマイルを貯める仕組みがあります。
たとえば
・無遅刻無欠勤なら1000マイル
・会社に改善提案したら500マイル
・その改善案が採用されたら10000マイル
・売上目標を達成したら5000マイル
・自分の働くお店以外のOWNDAYSの店舗に行ってチェックインしたら100マイル(距離が離れれば離れるほど多くなったりする)
https://ameblo.jp/shuji7777/entry-12294080176.html
まとめ
この記事では、脳を活用して社員のモチベーションを上げる4つのステップと28の仕組みについて解説しました。それぞれの企業が脳の構造を理解しているかどうかはわかりませんが、脳の構造に沿った仕組みだと言えます。また、紹介した会社はすべて収益性の高い会社です。どれかひとつでも取り入れれば、効果が期待できると思います。ぜひ、ご活用ください。